いちまいのさら
鳴神夭花
耳の中で音が響いている
誰かの声
誰でもない声
有象無象
確かに其処にあるものたち
僕の顔など見えないくせに
僕を見ているようなふりをして
ああ
こんなのは自意識過剰だよ
何も、誰も
僕を見てはいないよ
それでも息をすることは苦しくて
呼吸の方法も分からないまま
アボカドの種を包丁で切りつけた
包丁の方が欠けてだめになった
生きていることは呪いだよ
きっと罰なんだよ
そっちの方が気楽でいいや
全部わるいことなんだって思い込んでいた方が
仮面を貼り付けて
新しいまな板を買って
台所に足を踏み入れない日々が
まだ続いている
自由詩
いちまいのさら
Copyright
鳴神夭花
2020-03-04 21:40:52