もえかす
うめバア

久しぶりに、酔っ払ったあの夜

「あのねえ、私、好きな人がいるのー」

いるのー、と延ばした音の先まで

彼女は駆けて、そして駆けるのをやめて

だって酔いが回っちゃうからね

また少し、前を見て話を続けたね

ちょっと前までつきあってた男の

情けなくも、もろい話を聞いて

たった今聞いた新しい男との

のろけ話にチリチリして

また明日もへらへら笑って飲みに行ける

嫌になるくらい

そう思っていたから

せっかくつくった友達も

交わした連絡先だって

惜しげもなく捨ててしまった

数十年たって

花火の翌日の燃えかすみたいな思い出を

拾い集めるなんて、気がつかなくて


自由詩 もえかす Copyright うめバア 2019-06-22 07:32:49
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