どこへゆくのでしょうか
帆場蔵人

その手は冷え切っているから
あなたが春なのか冬なのか
わからなくなってしまいます

つくしにふきのとは
いつもの場所にいません

あなたの背中をさがして
遠まわりして歩いていたら
風花が散り、春と冬が
木に吊されて代り番こ

どうにもお加減が優れないようですよ、と
白梅の老木と垣根の椿が囁きあって世間話し

畑に取り残されたいっぽんの大根は
あれが雪なのですね、あれが冬ですね、と
はしゃぐうちにあの老婆に引き抜かれ
夕にはだれかの腹のなかでしょう

とおくで誰かが春を歌っていて
あなたは無情に日をめくり
三月はゴミ箱で眠っています


自由詩 どこへゆくのでしょうか Copyright 帆場蔵人 2019-03-15 00:01:33
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