処刑
ミナト 螢
トーストにバターを塗るナイフが
会話のように渡されることなく
淡々とした世界に割り込む
七時のニュースが今日も聞こえる
誰かが踏み外した人生の
後始末を映すナイフの先で
鈍く光ってる涙の行方に
フラッシュを当ててバターが溶ける
トーストの上はリングみたいに
囲まれても戦う場所だけれど
その白い生地に顔を埋める
ナイフを持つ手が息を殺して
食パンの耳からちぎって食べる
不正や隠蔽を見逃さずにいる
この社会にも正義があるのなら
どんなにライトを浴びた身体でも
壊れたリングに人は立てない
自由詩
処刑
Copyright
ミナト 螢
2018-11-28 08:26:28