濁音のない日々
こたきひろし

隣で女は濁音立てて鼾をかいている
ついさっきまで
愛しい人も発情すれば夜中に哭いてやたら煩かったのに
事が終われば
疲れて眠ってしまったんだろう
だけど
事が終わっても
男は眠れなくてぼんやりと部屋の天井を見上げていた

この世界から濁音はなくならない
どうしてなんだ
もしかしたら
生きるという事は濁音の集積なのかもしれない



俄に雨がザーザー降りだしてきた
風がビュウビュウ入り交じる
やけに虚しくなって
やけに寂しくなった
一夜


自由詩 濁音のない日々 Copyright こたきひろし 2018-11-28 07:56:37
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