詩を書くなんて
こたきひろし

詩を書くなんて
意味のない降るまい
かもしれない

少年時代に隠れて詩を書き出した自分は
暗い心だった
ノートにあるいは教科書の白紙のページに
言葉をまるで虫のようにいちめん這わせたのだから

その詩は負の暗号
誰にも解かれたくなかったが
誰かに読んで欲しかった

例えば初恋のあの人に
彼女の靴箱に
そっと差し込んでしまいたかった

しかし
それはついに果たせなかった
彼女は十三
私は同い年

初恋のあの人には一編も詩など必要ないに違いなかった
快活で明るかったのだ
その明るさは暗い心には眩しくて
目を向けられない筈なのに

男が女に心奪われる不思議

詩を書くなんて意味のない降るまいなのか
初恋のあの人に詩を読んで貰いたかった
彼女の靴箱にそっと忍ばせたかった

思いは空回り
体は夢想した
少年の時代


自由詩 詩を書くなんて Copyright こたきひろし 2018-08-08 07:28:54
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