初夏
オイタル

町に出る
屋根の赤い銀の車で
赤子が泣く
屋根の黒い黄色い車に

 ごま塩頭が足を組んで
 ウインドウから通りを振り返る

汚れた風が初夏を吹きわたる
新しい靴を買おうか
まだかかとの減っていないやつ
つま先のゆるいやつを

そいつで歩こうか
小さな写真に切り取られたような
歯抜けみたいなお菓子屋の角を
節の抜けた青い板塀の前を

 床屋の高窓から
 緑の看板が覗く

平成からどこへどうこう変わろうが
国境をだれとどいつがまたごうが
町は今も昔のまま
刷毛ではいたような薄い雲が
遠く山の陰までゆるく息吐き
山裾は足元の川べりまで伸びてくる

そのような
町に出る


自由詩 初夏 Copyright オイタル 2018-05-02 05:47:39
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