電話1
板谷みきょう

あたし 解る?
電話番号、変えてなかったんだ。
言っとくけど、あたし 
頭おかしくないからね。

深夜に鳴った携帯電話口から
女の声が聞こえる。

…で
名前を名乗ってくれずに
そのまま

あたし 50に成っちゃったよ
今から あたしん家に来てよ
言っとくけど あたし変じゃないから。

えっ。えぇ???
すいません。
どちら様でしょうか?

狼狽えながらボクは
そう答えるしか無かった。

あたしのことなんか
もう忘れた?
覚えてないんじゃ
しょうがない。

あたし、〇〇だよっ!
平岸の家に 今すぐ来て。

ふん。来れないんでしょ。
解った。じゃーねバイバイ。

そうして電話が切れた。

それから半年して
気になって二度程電話して
留守電にメッセージを入れたけど
未だに電話は二度と来ない

そうして
そうやって

若気の至りは
重く圧し掛かって還暦


自由詩 電話1 Copyright 板谷みきょう 2018-04-10 03:27:35
notebook Home 戻る  過去 未来