茶摘み歌
オキ

∇茶摘み歌 服だぶだぶの 少女かな

 入院した母の代わりに、少女が母の着ていた茶摘みの支度をして、茶摘みに精を出している。
 スピーカーからは、村中に茶摘みの歌が流れている。

♪ 夏も近づく 八十八夜
♪ 野にも山にも、若葉が茂る
♪ あれに見えるは 茶摘みじゃないか 

 少女の口も開いて、歌を口ずさんでいるようだ。
 空では、ヒバリが囀っている。
 茶摘み歌と競うわけでもないのだろうが、ヒバリの声も、かまびすしいばかりに盛んだ。
 思わず少女は顔を上げて、ヒバリの姿を探した。太陽が眩しく、ヒバリは見えない。一瞬光ったように見えたのは、ヒバリの嘴に反射した陽の光だと分った。



自由詩 茶摘み歌 Copyright オキ 2018-04-08 16:28:36
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