マンホール
ふじりゅう

おおきななぞなぞ
振り出しとにらめっこして
解き明かしたら

天国でパーティが
開かれた



クジラの群れの中

彼はただただ優秀だった

だけど、いつも地下道で

心は反響するだけで

思い切り投げた彼の小石は

地下道の中で


こー…ん ―







だけど

砂も巻き起こらないアスファルト

沈まない地点で腕組みしていた

あと


心をもたない病の札が

真実を持たないさみしい背中に

ただただ貼り付いて


ゼンマイみたいに唯人の

心の支えとなっていった



――――――

彼は一杯の幸せを大事そうに抱えて

走り回る少年だった。

おじさんはすぐに消えた。

ベットに浮かんだままで。

割れたビールビンひとつばかりに

瓶と重なった唯人が映った―


――――――

先程投げた

彼の小石がひっそりと

僕を見てくれていたことに
気づかなかった





――――――

女はハンカチを手渡した。

ハンカチは初めて女の手に
触れたかのように

無限大に柔らかいものであった。



人間とはこういうことなのか。




女は炎に似た笑顔であった。

女は眉毛を整えているようだった。

女はらしくないピンク色の
イヤリングをつけているようであった。

女の瞳に似たものはどこにもなかった。

女に近い存在は僕の記憶になかった。

女は5~6着程の私服を所持しているようだった。

女はコーヒーにはミルクと、少々多めの砂糖を入れるようだった。

女は身長は僕より少々小さく、体重は聞いても教えてくれなかった。

女はデリケートな性格であると、自ら証言していた。

女は、僕が渡したイヤリングを、何故か大事そうにいつも着けているのであった。

女は、炎の笑顔であった。


背中もいつしか

笑わなくなっていた。






女はすぐに消えた。









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―人間とはこういうことなのか―
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あるはずの耳が動かない。

だから唯人から落ちたその

懐かしい音に背を向けて、発つ。








こー…ん ―
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自由詩 マンホール Copyright ふじりゅう 2017-12-16 17:30:00
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