死を語るなら
のらさんきち

生きていたいという人に
死にたい人の心が分かるものか

「いつか良いことがあるでしょう」

暢気な予言者よ
骨は軋み、心は張り裂けんばかりの明日を
迎える準備はできているのか


死んでしまいたいという人に
死にたい人の心が分かるものか

「ああ!俺もこんなに苦しい思いをしているよ」

悲運の英雄よ
一時の恋を失っただけの幼い孤独に
頷く準備はできているのか
あるいは
家族を、全てを奪われた果ての絶望に震える肩を
抱き止める準備はできているか


死は野辺の草とこそ語るがいい
渇きや病に見舞われようとも
生命が破壊されるまで死ねぬ草と
傲慢な靴に身を踏み折られようとも
抗い逃れる術を持たぬ草と

あるいは森の木々とこそ語るがいい
親しき虫や、草や、鳥たちの死を見送るばかりで
我が身独り立ち続けねばならぬ木と
傲慢な人の営みを支える優しさを
チェーンソーで切り裂かれてなお黙する木と


自由詩 死を語るなら Copyright のらさんきち 2017-11-25 12:13:38
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