命の忘却
のらさんきち

鳩が、轢かれていた
先刻まで内臓であった、肉であった
暗い紅の塊を
透明な青空に晒して

恬淡として流れる時の何処か
羽ばたく命として「いた」それは
一瞬を境に
おぞましい塊としてそこに「あった」

ああ、何故だろう!
それが穢らわしく思われるのは
目を背けたくなるのは
命とは
そんなものなのか!

その物体は雄弁に死を語っていた
街行く人は、急ぎ足で通り過ぎていく
耳を塞ぐように
何も無かったかのように
そして僕も…



夕暮れ
あの物体は消失していた
何も無かったかのように
いつか僕の神経回路にそれは
初めから無かったモノとして
永遠に記録されるのだろう

そしていつか
僕も…


自由詩 命の忘却 Copyright のらさんきち 2017-11-29 07:29:33
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