目張らない生活
藤鈴呼



遠くの金魚
見つめれば 尾鰭のついた噂話も
御姫様のドレス内に 包まれてしまって
只管 忘れられるかのような 産物

白濁した水面に浮かぶ目玉がとても白くて
青空と一緒に映り込む雲の欠片と勘違いしている
ねえ坊や そう思うでしょう?
乳母車を今にも手放しそうな老婆が静かに咆える

キイ カタタタ
横から縦に編み続ける織物
反物なんて言葉から離れて数年経つ
ミシンやボビンなんて必要のない生活
カタカタと回るのは 南部曲家の横で動く水車のみ
その水を飲んでいた馬も 死んでしまった

鯛よりは重宝される代物
調理済みと言うから醤油一滴 垂らすのも
何だか失礼である気がして 縮こまる
茹であがったタコのような雰囲気に唇の形を持って行けば
非難と愚痴の鬩ぎ合い

聴く方だって こんなに辛いのだから
話すアナタは よもや唇を外してしまいたくなるのではないですか
と言う言葉ごと飲み下す
泡の出るビールと一緒に
そんな季節だ

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自由詩 目張らない生活 Copyright 藤鈴呼 2017-07-11 09:55:11
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