暖炉
藤鈴呼



戯れの猫が二匹
首を伸ばして寄り添っている
コンロの上 いや違う
それじゃあ 食べられてしまうでしょう?と
お小言言いながらも 唇は歪めて笑う

勿論 口角は揚げる方向が一番だから
カラリと揚がった天婦羅が 今夜の口上

誰にも邪魔させないの、とは言いながら
この お抹茶色したお塩ってば
見かけ以上に確りとした味わいだから
ちょっとねえ 舐めてみて? なんて 話し掛けている

それでも二匹は寄り添ったまま

土台 無理な話なんだ
足元を括りつけられているから
例え 目の前で焼かれているのが 魚であろうとも
ヨダレを流すばかりで 喰らぬ事など 到底 不可能なのに

理想郷ばかりを追い求めたら 足元が灰になっちゃった
例えば杯ならば 返盃している内に 四方山話も出来ない位に
酔っぱらっちゃって 千鳥足を抱えちゃって ふらぁりふらりと
猫の尻尾を振るような事だって 簡単でしょうけれども
ねえ 何故なんでしょうねぇ なんて独り言

気付いたよ 今の季節には 相応しくない
ここに在るのは コンロではないんだって
オーブンでもないの
幾らピザが食べたいからってね
そんな洋風な御洒落っ子サン ここには居ないのに
ちょっと ねえ 間違えちゃったわ
と 何時までも喋り続ける
囲炉裏の前で

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自由詩 暖炉 Copyright 藤鈴呼 2017-07-08 00:01:59
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