夕暮れの赤い川
Lucy
高架下に流れ込む
川は
いつも後ろ姿
追い越したくても余地はなく
一定の速度を保持し
行列を維持して
たどたどしく
けれど確実に
進んでいく
迷いながら
躊躇いながら
進んできた分
ラストスパートの余力が残る
もっと遠くへ
もう少し速く
焦る
急ぐ
あと少しだけ
ただ一度だけ
全速力で
疾走したい
エネルギー出しきって
離陸したい
どこかへ
まだ見たことも
聞いたこともない景色を
渡り
もどかしい夕暮れが
緩慢な死のように穏やかな顔で忍び寄る
ゴールではなく
スタート地点へ
滲みながらまばたき始める
テールランプのさざ波