墨が離れた
藤鈴呼


パラリと言う音が 今にも聞こえそうな程
距離感は 遠くもなく 近いとも呼べない

厚みは ゴムほどではないが 
紙ほどは 薄くない

一本の髪の毛が すっと風に攫われる瞬間のような
美しさを称えて
光が笑う

こんにちは
その表現 間違っていますよ 

と 問いかけようとして
口を噤む

最近のパソコンは御洒落だ
外観のみならず 自らの打ち間違いをも 
自動的に訂正してくれる
そんな機能を持つ

昨日は 選ぶことに 夢中だった
間違えたつもりの変換を 楽しむ余裕さえあった
その変化に 自ら 戸惑っている ふりをする

大きく振りかぶる ストライド 
指の先に コンパス
トドメを刺されないように

同時に できるのならば 
後ろ指だって 御免蒙りたい

コブラツイストって技が あったでしょう
アレ 一度で良いから かけてみたいんだ
君が言った

一度だけだよ

念を押した筈だったのに 傘は破れ
穴という穴から 水滴が溢れて来る

ずぶ濡れになるのを隠すための長靴も
真上からの攻撃には避けきれない

キレない器が欲しいね

とっておきの陶器よりも 真っ白い心の中に
また パラリ

昆布のような 墨短冊が 落ちた世

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自由詩 墨が離れた Copyright 藤鈴呼 2017-04-02 13:24:51
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