田舎のサービス
藤鈴呼


鮮やかにサドルを漕いで 通り過ぎて行く
サドルは焦げぬ
尻にかかる重圧が なんぼのもんじゃい

ジュウジュウと焼き色を付ける もんじゃの湯気が
眼鏡を曇らす

元々 ピーカンばかりを連想するから 
曇天で暗くなるのだ

最初から「雨が好きだ」と豪語していれば
こんな微妙な気分で新聞を広げる必要なんぞ 
なかろうに

少し 屈託のない笑顔の裏で
寂しそうに呟くと
彼は そっと 跨った

そのチェーンが 独りでに 回り始める
タイヤとタイヤの隙間を縫うように 進み出す

ここは校庭

地面の高低差は有りませんが
華麗なジャンプをキメるには
少々テクニックが必要ですと先生

雲梯やブランコが 行く手を邪魔する
滑り台の頃は良かった

大抵 坂道の終わり 
半径10メートル以内に近付かなければ
怪我をする必要なんて なかった

ところが今じゃあ どうだ
ブランコは 前後に動くばかりではない

左右にだって
時折 宙を舞う大ジャンプなんかで魅せる
さながら田舎のサービス

チケットはお安くしておきますよ
今日はお休みなんですか
なんて語りかけている間に

雲梯から飛び降りた誰かの足型が
頭上でハミングを続けるのだ

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自由詩 田舎のサービス Copyright 藤鈴呼 2017-04-04 19:35:39
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