さっちゃんの空
もっぷ

さっちゃん
その絵のお空 きれいね
うん
見えるとおりにクレヨンぬったの
心を持った先生だった
さっちゃんのその画用紙は
全部が青色だけで塗りつぶされていた

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園庭の、みんなの花壇の前で
お花を描きましょうという時間
さっちゃんが 口を結んで泣いているのを
先生はみつけていた さっちゃんの
手許の画用紙に四歳のなみだが滲みこんでいく
さっちゃん自身も気づいていた

お花のことなどあたまのなかから
すっかりとなくなっていたさっちゃんは
お絵描きだけは それだけはちゃんと
ほんとうは見上げもせずに空を
確かあおかったはずだと あおいろ を握りしめ
……それがこの日のせいいっぱい 先生は
何も聞かないでも その青い一枚が空だと悟って
さっちゃんに きれいね って

なぜってそのお空は わずか四つのこどものなみだが纏う
きれいでない理由がありますか



自由詩 さっちゃんの空 Copyright もっぷ 2017-01-04 23:28:48
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