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水菜

青。
青いひまわりが在れば良いと思った。
空に向かって咲く姿は、今とは全く違う趣なんだろう。
青ではなく、太陽の強い日差しも跳ね返す、美しい黄色の花は。
宙に浮かんでいるように見えた。
ふらふらしている。
黄色い花弁の中心にぎゅっとおしこめられたように在るこげ茶色のひまわりの管状花は、
爽やかな青空の前にさらされて、はずかしそうにしている。
虫取り網を抱えたむぎわらぼうの男の子は、
ひまわりの花の中心に留まり、花の蜜を吸っている、宝石のような揚羽蝶を、きらきらした瞳で見つめている。
ひまわり畑の中心で、透き通った薄いブルーの空の下、風が通り抜ける。
男の子の麦わら帽はふっとさらわれて、空に舞った。
青空の下、黄色が一面に敷き詰められた、ひまわり絨毯の中に、少年は、管状花に留まった揚羽蝶の様に一つの黒い点になって、飛んでしまった麦わら帽を見上げている。

わたくしは、一匹のちっぽけなミツバチになって、あなたの傍を飛んでいる。
薄青い空の下で浮き立つような気持ちも忘れてしまった今のわたくしは。
年齢を重ねるごとに遠くなっていく。

青いひまわりが在れば良いと思った。
空に向かって咲く姿は、今とは全く違う趣なんだろう。
青ではなく、太陽の強い日差しも跳ね返す、美しい黄色の花は。

管状花はふらふら揺れている。
わたくしは、その中心で、夢想している。
あなたは、きらきらした瞳できっと揚羽蝶を見つめていた。

風が通り抜ける。
麦わら帽の少年は、虫取り網を持って。

飛んでしまった麦わら帽。


自由詩 ao Copyright 水菜 2017-01-04 19:15:04
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