灰を混ぜこねる。
梓ゆい
ゆっくりと開く釜の扉。
父はもうすぐ人の形を無くす。
「離れたくない。」と引き止めれば
もう少しだけ一緒に居られると願い
棺の縁を掴む。
空気を打ち破ったのは
「早くしなさい。」と急かした母の手。
惜しむように後ろを振り返り
遠くから棺を眺めていた。
冬の空気は澄み渡り
父を焼いているであろう煙のように
一息で消えそうな薄い雲がなびいている。
熱いお茶をすすると
「心がほぐれて、泣きそうになるから・・・・。」と
何も口にしないで俯いた。
(父は骨だけを残して、もうすぐここに帰ってくる。)
腕の中に納まり
赤子のように抱きかかえられながら。
自由詩
灰を混ぜこねる。
Copyright
梓ゆい
2016-04-01 13:59:16