群景
ねことら






今日は木曜日。だから木曜日のテンションで、みんなルーチンワークで鍵をかけて、JRに乗って、動いたり、生きたりするね。システムだ。ライフイズシステム。透明な機構。二月はまだ冬の正しい空気で、少し緩まる昼の陽気と、つるっとした皮膜を滑る夜のつめたさに、何となく挟まれ、日を過ごしている。


テレビやパソコンのディスプレイ、ケータイの画面、おびただしい情報は、機能的に集約されている。なんてすばらしい平面世界。でもそこに空間上の厚みはなくて。視覚的な薄み、そして生じる違和。ぼくらは瞬間瞬間で当惑して、何か大きな枠組みにだまされているんじゃないか、そんな醒めた孤独を感じて、またすぐに忘れていく。僕も君も、俯瞰すれば情報と同義だね。


ドラッグストアで売られるものと、スーパーで売られるものは少し違うから、僕らはパーツを選ぶように、一日のヒストリーを記していく。たくさんのプレイヤーキャラクター、それはそれぞれにとってのノンプレイヤーキャラクターで。イベントはきらきらひかる糸のように無数に上から下へながれて、好きなポイントに、思い思いのカラフルなフラグを立てていく。


湯船にりりりっと40ドシーは満ちて、夜のお湯のひとつぶひとつぶは薄い膜におおわれ、お湯ほんらいの凝集と、ゆるみに、ふるふると震えている。自分内お湯レベルスリー。いろいろなものが、とけて、うずくまる。起伏も、感情も、一日は洗い流されていく。僕も君も、あいまいな輪郭なんか溶かして、つながっていたいとおもう。セックスでも、ラインでも、気持ちだけでもいい。今日は木曜日。明日は金曜日。すこしずつ夜は深まり、皮膚は充実へシフトする。何か匂いのような、明かりのような、みえない美しさを、信頼したい気持ちになる。







自由詩 群景 Copyright ねことら 2016-02-11 22:24:17
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