スマイル
八雲みつる

暴かれた世界に居場所はない
いつもぼんやりと生きていたいから
はっきりと輪郭が見えるとそれはもう
私とは違う誰か

私に暗闇を
私の顔と共に彼の表情も隠しておくれ
真っすぐな感情なんて見たくもないから

視線は痛い
私の体を居抜く一筋の光

彼が私に話す
鍛えられた槍に似た真っすぐな言葉

やめてくれ!
闇の中なら曖昧に笑って誤魔化せるのに

暴かれた世界に闇は無い
彼の心のように
熱い風が私の髪を揺らす
背筋がゾクリとする
膝が笑う 喉が渇く
鼻の奥がつうっと痛くなる

振り返り膝をついて大声で泣いた
彼は泣きやむのを待った

十七分後に泣きやんだ私の頭上で
太陽はひどく曖昧に笑っていた


自由詩 スマイル Copyright 八雲みつる 2016-01-28 21:28:03
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