icene
八雲みつる
霧雨が煙っている
暗雲が太陽を遠ざけ、私と世界を切り離す
森は静かに私を見下ろす
まるで抱くように、閉じ込めるように
黒と緑が湿り気を帯びて、色はますます深く
五月の寒々とした雨が、音もなく私を濡らす
言葉をもっと!声をもっと!音をもっと!
芽吹いた浅葱の新緑は、嘘のように沈黙している
切り株はただ静かに時を過ごす
切られた私の髪のようだ
木陰に逃げ、取り出した煙草に火をつける
黄金色に輝くジッポの音は、無限の自然に飲まれた
刻まれた煙草の葉も、限りない蒼の季節がある
私の吐いた冷たい煙は、止む気配のない霧雨に溶けていった
自由詩
icene
Copyright
八雲みつる
2016-01-16 22:31:01
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