逆さまに落ちる人
yamadahifumi

透明な渦が引かれ
その中に世界は吸い込まれていく
「私」の名もいつしか透明となっており
人々の眼窩の中にそれはない
…今を生きているという実感が
この私を生かしているのだろうか?
死を肯定するという事もやはり
生の実存の一つに過ぎない
「私」の為にあらゆる他人を使役し
この世界のすべての人間を私という王の為の奴隷にしたって
そんなゲームにもいつか飽きがくる
もし人生が無限に続き、我々が無限の富に恵まれたとしてもやがて我々は
その事それ自体を否定したくなるだろう
人間は世界の外側を考える事はできない
なぜなら、世界と呼ばれる存在そのものが私達自身の存在とイコールなのだから
人々にとって世界が生きる場所であるなら
私にとってそれは苦痛を受ける場所
そしてその苦痛から何が生まれてくるか
私自身知る由もない
この詩を読む人間が世界にこの私一人しかないとしても
私は私が誰よりも客観的な基準を握っている事を知っている
そう、私はあくまでも私の主観的な基準の中で
自分が世界と同一だという事を知っているのだ
だから、人々は……いや、もう人々の話はよそう
とにかく私は今ここに生きており、だから私は
今生きている自分を越えようとしている
だから、私は私の悲劇を見る事ができる
船首から逆さまに落ちる船人のように
世界が私の逆目に綺麗に映るのであれば それはやはり
この世界が元から逆だったという事の証明になるだろう
そしてその時、君の目は
何故か、閉じていた


自由詩 逆さまに落ちる人 Copyright yamadahifumi 2016-01-01 13:02:42
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