鎌倉の朝   
服部 剛

鎌倉の朝は、なぜか散歩がしたくなる。
低い緑の山間から
燦々と顔を出す陽をあびようと
玄関のドアを、開く。

日頃住む街よりも
澄んだ風を吸いこみ
図書館の庭に足を踏み入れ
ベンチに腰かけ、瞳を閉じる。

――光合成

木々の葉の囁き
川のせせらぎ
掃除夫が枯葉をはいている。
少し離れた国道を車は遠ざかり
世界は今、目覚めようとしている。

瞳を閉じた、黙想のひと時
日々の情景は音楽になる。

(ここは古都鎌倉の國…)

燦々と降り注ぐ陽が
私の全身をしみじみと浸して
初冬というのに
シャツの衣が、暖かい。

今日の日に与えられた
この命
胸に手をあて、ゆっくり瞳を開く。

私の古びた靴さえも
今朝は爽やかな表情を
揃え
庭の出口の先へと続く
鎌倉の小道の方へ
すでに、爪先は歩き出している  






自由詩 鎌倉の朝    Copyright 服部 剛 2015-10-13 23:25:18
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