ハリボテ
凍月


解体工事中の廃ビルから
鉄材が鳴り響く音が
突然、微かに聞こえた
それは完全に想像
理由も無い幻聴

壊れた仕掛けを隠すハリボテも壊れた




くたびれた様子で
うつらうつらと
霞がかった湖へ小舟を漕ぎ出す
そんな君を支える背中が
僕のものであれば良いのに

歌うように
世界は美しいと
奏でる君の
ふとした止まり木に
なれれば良いのに




そんな言葉が
がらがらと音もたてずに崩れた
廃墟に差し込む光
一輪の花を見つけた
でも
表す言葉は「ニセモノ」で
摘むと萎れて枯れてしまったんだ


解体工事中の廃ビルから
鉄材が打ち響く音
壊れた仕掛けを隠していた
ハリボテさえも壊されてしまった





自由詩 ハリボテ Copyright 凍月 2015-10-01 22:24:14
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