夜の街 僕を消して
凍月



僕は何を怖がって
視線を落とし街を歩くの?
向こう岸へ
向こう岸へ
そんな所に君はいないから

僕は一体何に怯えて
光ある方へ流れるの?
知らない世界が見たいだけ
知らない景色を迷うだけ
でも奥底の動機はまだ不明瞭

誰もいない背後を振り返り
帰り道なんて考えていない
黒いざわめきから足早に逃げ去るけれど
開いた瞳孔はよろめいて
行き止まりを何よりも恐れてた

一度も来たことが無かった
高い高い町の外れで
僕は初めて振り返って
星空を映す水面のような
僕も君もいない夜の街を見た


ねえ
君の事が好きだから
夜道を一人進むよりも
君に嫌われる想像の方が
遥かに遥かに怖かったんだ

人が怖い
暗闇が怖い
それは僕の内に僕があるから
君の事を忘れられない
僕が此処で息をしてるから

お願いだから夜の街
僕を隠して
僕を消してよ
海まで見える絶景の夜を
見ても君が忘れられない僕を



瞼を閉じて
一瞬だけ 君にさよなら





自由詩 夜の街 僕を消して Copyright 凍月 2015-09-25 22:21:03
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