コンクリートに殺される
凍月



どこかから怒鳴り声が聞こえる
悲鳴でないだけ良いのかもしれない



灰色の恐怖 圧迫感
その あまりに巨大で
要塞のような塊は
視界から見切れてしまう
圧倒的な質量の、壁

或いは
美しい、と思うべきだったか
だが僕は恐怖しか感じない

コンクリートが殺す
殺す、殺す
精神を砕く、壊す
柔らかいものは硬いものに
当たって崩れる、殺される

エレベーターという密室が動いて
そのまま天国までいく
否、死刑台か?
死にたいと少しでも思ったら
その壁から落ちるだけで良い
九階で安全圏なんだ
三倍あれば確実

高さはエネルギーだ
位置エネルギーだ
故に実際に力を持つ
人間には抗いようも無い力
見てはいけないのに下を覗く
全てが小さい
距離感が分からない
透明になった腹部を探られる
魂を掴まれる
こっちへ来いと呼んでいる


コンクリートに殺される
殺される、殺される
落ち潰れ死ぬ白昼夢
殺す、殺す、コンクリートが殺す
コンクリートに囲まれた世界
地面も空も遠すぎる




きっちりと揃えられた靴だけが
抗いようもなく無機質な箱庭に
ぽつん と
遺される






自由詩 コンクリートに殺される Copyright 凍月 2015-09-24 17:27:10
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