冬の釣人   
服部 剛

北風の只中を防寒靴で歩いた、僕は
あの日の旅路を手にしたペンで、筆記する

   *

――記憶に蘇る、海の匂い
遠くに見える、断崖に近づくほど
潮の香りを鼻腔に…吸いこみ

断崖の絶壁に、胡坐あぐらを掻いて座るひとは
瞳を閉じ、長い釣糸を遥かな眼下の荒波の
潮目に向けて垂らし――待つ

  黄金ノ魚

針に喰いつく、あの瞬間を  






自由詩 冬の釣人    Copyright 服部 剛 2015-09-08 23:33:13
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