記憶 忘却
凍月




見上げた夕暮れの青空が
迫り来る夜の黒に飲み込まれてゆく光景
その時僕が感じたのは
何も恐怖だけでは無かった筈なのに
自分が抱いた感情さえ
忘れている

こんなにも忘却が悲しいだなんて

幸せな時間と悲しい記憶と
どちらがより遺るか だなんて
とても考えたくない
答えを知っている気がして
疑問を忘れようと頭を振り続けた

忘れたいものは残っていく
忘れたくないものから消えてゆく
そうだ
裏切られた記憶が蘇る
忘れたく無いものと
やっと忘れられた、とおもった記憶は
大抵が全部残っていて
あなたの事なんて
2秒で忘れよう
破られる誓いなんて
もう欲しくない
忘れたく無い全てが消える裏で
忘れたい全てが積み重なる悲劇

あなたと別れたあの日が
夜の暗闇から浮き出るようで
踏切を蹂躙する電車の音さえ
薄れるように
はっきりと鮮明に
あの時の出来事が
思い出されていく苦しみ


こんなにも記憶が悲しいだなんて


そうだった
あの日も確か
こんな風に墨で塗りたくったような
そんな夜だったんだ




忘却/記憶
どちらもこんなに悲しいものなら
どちらも捨ててしまいたい





自由詩 記憶 忘却 Copyright 凍月 2015-08-25 21:30:42
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