ユウコ
吐水とり

放課後、
曖昧にわらっていたらだれかに可愛いって言われた
そのうすぐらい背中にくっついていって
きづけば喫煙席に座っていた
火傷した舌にざらついたコーヒー、問いかけの意味がわからなくて
またわらう


「言葉はいっつも爪の先にあるの
掴もうと引っ掻いてぼろぼろにするから
語尾なんて掠れて消えていく
灰がさらさらおちてい」、って
ひとり
ひとつのコーヒー


寒い日、きょうもわたしはちえおくれ
なにも入っていないかばんを揺らす


夕焼けのさきに放り出された右足、左足
右足、左足、右足、だめ、おちてく

メモ帳のアプリでしをかいたら家にかえる






5重の布団にもぐって
わたしはわたしと向かい合って
互いに喉のおくに手をつっこむ
心臓のすぐそばまで生えてきた棘をゆっくり撫でる
上になったり、下になったり、
とてもやわらかい産声がすぐそばできこえるからみみをすます
「もうすこしどきどきしたら刺さってしまうね」とわたしがわらっている
肉を食べる鳥のなきごえ、「ぴゅーい」
足の指がきゅっとなって耳もとがごそごそする
息を吐き出せば明日の酸素がどんどんにげていくから


だれかがわたしの名前を呼ぶ



「ユウコ、」

手をひらいて、手をとじて

手をひらいて、手をとじて





自由詩 ユウコ Copyright 吐水とり 2014-12-27 22:10:38
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