さるのがらんどう
吐水とり

垂れ下がるこうべ五十数個、
効きの悪い空調がため息と空咳を掻き回すのを不可動式の椅子に座って眺めた、
ノートと感度は真っ白け

夜光心理学概説b/後期金3
蛹谷 空二郎


隣のヨシザキの口に含まれた飴玉からLINEの着信音噛み砕かれて途切れ
コメントシートは何度もていねいに折りたたまれ鋭利な三角形になる、

教授は
糸を吐く
彼を纏うだけの糸を吐く
プロジェクタ光る
埋葬の儀式を映す


どこからでも黴びた匂いは寄ってくる
足元に伸びるアルファルファが「想像せよ、想像せよ」とささやくから

想像した

(巨大化したミトコンドリアが僕の口からぞろぞろ這い出して単位の多いやつから貪り食う
/最後列左端から二番目の男はモッズコートと魂転換しモッズコートは居眠りを始め男は「暑い!」と叫ぶ
/女子大生のアタマにストラップを付けてカプセルに閉じ込めたガチャガチャ「じぇーでぃーDX」水浸し
/即戦力になりたい飛び交うツバメの目
/手垢だらけのスマートフォンを空中に放り投げてフォロワーを淘汰せよ
/線引きしてたつもりが最早ミステリーサークル
/血に濡れたフレアスカート
/エナジードリンクに溺れたミイラ
/海底の1DKグラビティのせいで一歩も動けない
/図書館を浮遊するライフルを持った天使
/グライダーおちてく
/たからものをうめたよ



)


教授は
繭になる
どろどろ
どろどろになる


僕らの方舟/阿呆船203講義室は今日も沈没します。



沈没します。
たくさんのがらんどう。




<ヨシザキ があなたを さるのがくせい に招待しました>


自由詩 さるのがらんどう Copyright 吐水とり 2014-12-05 13:10:53
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