手を振った、実が落ちた
あ。

数え切れないほど迎えた夕暮れは
あちらこちら、少しずつ姿を変えているのに
いつだって美しいのひとことで済ませていた僕たちは
きっとひどく陳腐な影法師を伸ばしていたんだろう

最後なら、大切なものをきみにあげるよ
真ん中で割って、半分ずつにしよう
もしかしたらこれはひどい勘違いで
まだ一日残っているのかもしれないし
むしろ最初の日なのかもしれない

それでも、
半分あげるから、
だから、

丸まった背中が遠く小さくなってゆく
指を閉じたままで微かに手を振ると、視界の端に
夕日が濃縮されたような紅色の実、ひとつ


自由詩 手を振った、実が落ちた Copyright あ。 2014-10-17 14:45:37
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