アラビアータJr.は抵抗しない
ブルース瀬戸内

食べられる前に食べてしまえ
僕の父アラビアータシニアは
そう言い残し食べられました。

アラビアータとは何者なのか
アラビアータの矜持とは何か
そんなことに父は思案を重ね
冒頭の考えがまとまった瞬間
キラリと光るフォークの先で
クルンクルンに露に巻かれて
とある貴族に食べられました。

父さん、食べられとるけども。
最後に僕がそう声をかけると

そらせやけどもなジュニアよ。
と父は力を振りしぼって答え
底知れぬ闇の中に消えかかり
それでもなお最後の最後には

食べられる前に食べてしまえ
俺は今まさに食べているのだ
まるで食べられるかのように。

と質の低い遠吠えを披露して
ツルルンと消えていきました。

なんだかよく分かりませんが
僕はとっても美味しいですよ。


自由詩 アラビアータJr.は抵抗しない Copyright ブルース瀬戸内 2014-09-09 18:53:13
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