秘密の体験
yamadahifumi





言葉、夢の如くに

宙を舞い

現実はフィクションの如く

空を飛び

人間達が放つ幻想はどれもこれも

一輪の花ほどの価値もなく

中年男は汚くわめき

中年女は醜く罵り

そして若者らはただもう愚かで愚鈍で

年寄りは昔年を振り返り愚痴を垂らす

人間進歩の二千年はただ

ラブホテルやカラオケなどの複雑な光学機器によって作られた

奇妙な幻想空間へと結晶する

「さあ、ここで遊べ」と世界は歌うが

僕はただ、昔歌っていた歌を

今なんとか思い出して歌おうと

口をとんがらしているだけだ

例えば、李白や杜甫の作った歌のように

僕の口先からはわずかの言葉が

空の彼方に消えていく

人間二千年の歴史が例え、どのようなものだとしても おそらく

この一瞬は永遠だろう

タバコの煙が輪になって中空に消える一瞬

そのような魔法の一瞬、そんな夕暮れを

僕は

二十一世紀初頭に体験した

…ちなみにこの体験は

人間達には秘密である





自由詩 秘密の体験 Copyright yamadahifumi 2014-08-01 08:07:08
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