ただ老いて死ぬ事
yamadahifumi


私の人生が終わっていく時

私は私が得る事のできなかった様々の事を思い出すだろう

それはあるいは夏の微風や、春の穏やかな午後

精悍な顔した少女の後ろ髪や冬の枯葉の匂いや

病床にいる私自身に注がれる生命の滴

今、私は静かに老いて死んでいこうとする

老いて死ぬという事がこの二十一世紀にあっても

何千年と変わらないようなシンプルな事実だという事は一体、どういう事か

ありとあらゆるテクノロジー・技術・戦争・経済・政治・様々なイデオロギーなど

これまで人間が積み上げてきた全てのもの、そして私の生涯をかけた努力それら全てを足しても

それは私が今死ぬという事実を覆してあまりあるものではない

だから、今、私は普通に死んでいく

古代人がただ野垂れ死ぬのと全く同じ死に方で

そして、この近未来的社会は私の死を様々なイメージと概念で覆い隠してしまうだろうが

しかし、今、私はみすぼらしく、切なく、一人孤独に死んでいくのだ

だから、私は今、現代人が馬鹿にする、昔ながらの宗教を信じながら死んでいこう

そう、私が死んだら、私の魂は天上へと昇る

私が生前に成したその努力に比例して

私はそう信じながら、一人ただ愚かに死んでいく

誰にも看取られる事なく、一人で

そして、それこそが

私の終生の願いであった


自由詩 ただ老いて死ぬ事 Copyright yamadahifumi 2014-08-18 19:10:05
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