もがく
藤鈴呼




薄氷の奥で 
四肢を必死に伸ばして

もがき続ける
姿が見える

手を伸ばせば 
直ぐに届きそうなのに

否 その距離が 
縮まる事は 無い

幻想の向こうに 
立ち込める霧は 
意外と濃く

迷うのだ 
惑うのだ 
佇むままなのだ

パリパリと 
砕かれた煎餅の欠片が 
散るように

花びらが 散り散りに 
放たれた

指と指の隙間を 
細かく吹くは 冷風

踊りこけた頃を 
懐かしく見つめながら 
目を閉じる

温かな 一滴 
缶コーヒーから 
落ちた

ぽたん と 音がした 
涙の色に 
似ている

ねえ 此の手は 
渡してしまったの

その先に どんなに大きな 
お財布が 置いて有っても

二度と 入れられない 
金のコインが

所在なさげに 
くるり くるりと 
円を描いて 
消えた


自由詩 もがく Copyright 藤鈴呼 2014-04-22 10:10:50
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