いちまいの は
藤鈴呼




一年分のミスを
この一枚に 集約した
そんな年賀状に 微笑みながら
前を 見詰める

一枚の紙切れで
人生が 変わることは
多いだろう

願書の紛失
届の提出
書類の破片

丸めてしまえば
ゴミ箱へ ポイ

あなたの人生は
どんなでしたか

きっと 天国の階段で
通行券を 渡されるのだ

診査の書類が 有って
目を通しつつ
真実を 描かなければ
お目通し 叶わぬ 天女様

そんなら海女で 十分ですと
はにかみながら
歯に イカ墨を くっつける代わりに
ワカメを忍ばせて行けば

待ち合わせに 遅れた
苛立ちとともに
ガムを くちゃくちゃする 若者と
擦れ違う

あんなに 凄い 行列なのだから
一度 手続きが 滞ったならば
次の世代へ 引き継げば 良いものを

どうしても 我が 我が と
譲れぬ輩が 道を塞ぎ

待たされた 溜息で
路は 凍る

カチカチに 凍り過ぎて
アイゼンも 立たない
歯の立たぬ 状態なのに
葉ばかりは しっかりと 立つのです

凍った 水たまりから
真っ直ぐに
こちらを見つめて いるのです


自由詩 いちまいの は Copyright 藤鈴呼 2014-04-25 20:43:46
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