ひまつぶし
あおば

                     140321

本末転倒のお話しなんですが・・・、と
怖ず怖ずと切り出した男の眼が今にも飛び出しそうにけいれんするように震えている
そんなに怖い眼に会ったのならば
眼が引っこんでしまうのかと思ったら、どうやら逆に飛び出すんだなと僕は思った
50万円をだまし取られた挙げ句に警察に届けたら酷い目に遭わすと脅されたようだ
素人に脅されたのだから、切れやすい輩にやられるとほんとに酷い目に遭わされるから怖いね
僕は適当に相づちを打ちながらお題目を唱えていた
俄法華の信者だから声が不安定で一定の声音にならないから聞き苦しいだろうとそれでも一所懸命に唱えているところに飛び込んできたのだ
明日は禅宗の家に行き30分だけ座禅を組んでから般若心経を唱える予定だ
どうして日々宗派が変わるかというとこの村は戦後全国からの被災者が三々五々集合して仲良く集落を形成した開拓村だったのだ。しかし今では農家や林業家は殆ど無くてなにが家業か分からない人達が殆どで、定年退職者を装う俄コンサルタントや自由業を装う不動産屋、古物のネットショップを趣味兼副業にしている主婦に食わして貰っている失業中の夫・・、遠洋航海の元船員も少なくないようだが、この村に限ったことではないが、住民の平均年齢は50歳をとうに超えており、子どもの姿は滅多に見ることはない。
ウニが食べたい
鰹節をたっぷり掛けた冷や奴を食べたい
さば節を掛けたきしめんが食いたい
ムロアジもイイネとか小理屈を捏ねる輩はいくらでもいるが村会議員に立候補しようという積極性のある者は少なく、定員を満たすのが困難になっているが、この村の議員になったら落ち着いて饂飩も食えないくらい忙しいのを知っているからシンでもなりたくないという者も多く、議長はこの村の住民はなぜこのように消極的で食べ物の味わいのような些細なことや目先のこと、天気予報、先祖自慢に耽るなどの能天気者ばかりなのかいつも不思議に思っている。
それは美味しすぎる鰹節の掛けすぎが原因なのではないかと僕は思っているのだけど、鰹節もこの村の数少ない主要生産物のひとつなので、夢にも口にすることはない。


自由詩 ひまつぶし Copyright あおば 2014-03-21 23:40:00
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