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きるぷ

外国から封書がとどいた

ギリシャ文字の切手に、
数ヶ月前の消印が押されていた

知り合いは元々すくないし、
海外から手紙をよこす人間といえば
もう何年も会わないあの人ぐらいだった



目を通すと、
やや神経質な声が耳元で聞こえるような尖った筆跡が
すでになつかしかった

なんてことない挨拶と日常のはなし
その中に挟まれた、

  こっちではタコが大変美味しいです。

という一文にぼくは笑った

何かを一緒に食べている記憶ばかりがあるな、
と思った

・・

雨は今日も続き、
夜になると激しくなったから、
時々どこにいるのかわからなくなる現実感だった

そういえばあの人とは
けんかをして会わなくなり、
以来あまり思い出すこともなかった

それから数年の年月がある意味でひとしく流れ、
そしていま、この投げ出されたような部屋と
明るいギリシャとのあいだを
大変美味しいタコのイメージが隙間なく埋めている

そう思うことは、
なんだか不思議だった

・・・

雨は降りつづき、
つよい風が雨戸を音をたてて揺らした

忍び寄ったなにかに執拗に見つめられている気がして、
ぼくは思わずそのほうをふり返った


自由詩 6 Copyright きるぷ 2013-11-10 10:19:25
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