7
きるぷ

部屋の隅であなたが死んでいるから
ドアが開けられない
ぼくは部屋から出られない

せめてもの暇つぶしにと
本を探したが、
あったのは『謎の男トマ』だけだったから
窓のそとを眺めてたら、

あー、
なんて沢山の天使的形象が今日も



窓を開け腕を伸ばし、
その一匹をつかまえて

ぼくは空へと叩き落した
また世界にほほえみがみちた

十一月だった



 「木の葉が舞ってきれいだね みてごらん!
    こんな時期も すぐ過ぎるんだね」(dulcemente)


動かないあなたは死んでいるから
ぼくは沈黙をただしく解釈して
部屋をあたためる
話しかける
気になってしまう
苛立ち、
妥協点を探り
蹴っ飛ばし
オーティス・レディングの音楽を流し、
しかるのち甘言を弄し、
何度目かの手をさしのべる

それでもあなたは死んでいるから
ぼくはドアを諦めて
窓から外に出ることにした

そうして無数の天使的形象のひとつとなって
大気に四散する

死人を殺す方法を考えるほどには
やさしくはなれないのだ誰も


自由詩 7 Copyright きるぷ 2013-11-12 05:42:45
notebook Home 戻る  過去 未来