飛行模型
あおば

                 130806



本物の難しすぎる構造は安直に模擬してねと
先輩達は今日も飲みに出かける
残された見習いの僕は
2足歩行の細かい動作を追い切れない
足跡を数えながら
結果が同じながらだませるねと
足を動かす大摩擦車の直径を決めた
ゼンマイが弛むと歩みが鈍くなるから
その辺りを巧く誤魔化せばよいのだと
弛む螺旋構造に従って大摩擦車の当たる角度を変えてみた
歩み速度はほぼ一定になったのだが・・、
翌日、先輩たちに見ていただいたところ
ちょっとした坂道でもスピードが落ちてしばらくしたら停止してしまう
これではまともに使えないよと白い目を向けられた
ゼンマイの代わりに電気モーターが使えればなぁと思いながら
ゼンマイでなければ江戸時代の模型ではなくなってしまうから
鯨の髭を巻き付けたゼンマイにしなければならない
厳しい課題は残されたまま
そうこうしているうちに時代は進み
絞った聴診器のゴムの弛む力でプロペラを回し
大空を軽快に飛ぶ飛行模型までも作られた
二宮忠八の快挙だったが
実用化への道は険しく
模型のままに今に至るとかや
模型のままで周囲の理解を得るのは難しいようだ






初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
  タイトルは、クローバーさん


自由詩 飛行模型 Copyright あおば 2013-08-06 01:07:29
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