昭和ノート
あ。

シロツメクサが、あちらこちらで群れている
時折たんぽぽの黄色い花びらが見え隠れして
まるで、簡単すぎる間違い探し


花冠を作れないのはわたしだけ
細長い葉っぱを千切ったり
ありの行列を目で追いかけたり
その間に友だちは器用に編み上げて
ひとつ、頭に乗せてくれる
自分で作るのは面倒なくせに
幼い親切に胸が痛むのだけは一人前で


何回前の春の日だったか
そしてあの頃、
喜怒哀楽を何に使っていたのか
再生しすぎたビデオテープみたいに
画質はどんどん劣化している
記憶するには
日々は、あまりにも無造作で
わたしは、こどもだった


月極駐車場に車を滑り込ませる
今、タイヤが通ったところにだって
きっとあの頃はシロツメクサが咲いていた


自由詩 昭和ノート Copyright あ。 2013-05-16 15:14:19
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