真鍮の兎
藤鈴呼


押さえつけているのは 目に見えぬ 釘。
見えても 避けられるとは 限らないのが
厄介な 処

真鍮の兎と 心中しよう
真綿で 苦しめられるのは もう ごめんだと
固く 抱きしめた 縫い包みが 
苦しいと 叫ぶ

ヌイグルミのクセに
ナニがクルシイのか

譫言(うわごと)の様に 呟きながら ろくろを回せば
上澄みが 早く塗れよと 嘆く夜だから
少し 光らせようと アレを 取り出す

名は 何と言う
ちょっと待って 
思い出すから

まだ 言わないで
まだ 癒えないの

釉薬 そう ゆうやく と 呼ぶのです
上薬 そう うわぐすり は 上澄みとは 違うのだから

幾ら 綺麗に 塗りたくっても
焼けないなら 完成品とは 呼べぬことも
良く 知って いるのですから

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自由詩 真鍮の兎 Copyright 藤鈴呼 2013-04-19 19:54:09
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