春遠からじ
ねこ歩き

行き場のない気持ちに 名前をつけてみても
誰も呼んでくれやしない ねえ 声に出して
だから みんな 悲しいって 悲しいって
名前で呼び合うの まるで私たちの世界みたいに

痛みを伴って産まれてきた記憶は
粉々に磨り潰して 水と一緒に胃の奥へ流し込んだ
窮屈で退屈な日々に 呼吸がうまくいかなくなって
君に手を突っ込んで 取り出してもらいたかった

暗号みたいに消えていく毎日が
探偵無しの殺人事件のストーリーが
いま、私を悲しませる

でも、ほんとうは悲しみなんかじゃないんだ

行き場のない気持ちに 名前をつけてみても
誰も呼んでくれやしない そうさ ひとりぼっち
だれも しらぬ カナシミを カナシミを
名前付けて呼ぶ ひとり私だけの世界の中で


自由詩 春遠からじ Copyright ねこ歩き 2013-04-03 21:39:58
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