川原の小石の上に
オキ



川原の小石の上に
きのう置いていった青梅が
今日なくなっていた

こんな寂れた小川に
人が来たなんて
想像つかないし
それなら昨夜
予期しない水が溢れて
流されたのか

昨日と変わることなく
日の降り注ぐ川原に
そんな一大変化があったなんて
頭が受けつけないし

それならこの辺りを
棲み処とする小動物のしわざか
たとえば栗鼠、鼠、鼬の類
はたまたカケス、カラス、トビなど

いずれにしても未熟にして
あんなに酸っぱいものを
顔を顰めて咬んだというのか

たとえそうだとしても
どうして
研ぎ澄まされた五感を持つ
野生の生き物が
人の手でこね回わし 
汗と手垢にまみれた一個の
未完の実が良かったのか

それは謎の中の謎で
もしかすると心の救済の
端緒となるかもしれない
何となれば
さもしくうらぶれ果てた私が 
自らのどうしようもなさを
一個の青梅に擦り込み
解決などあろうはずもなく 
川原に残していったというのが
実情であったからだ

青梅を運び去った生き物よ
出て来い
あんなもののどこが良かったのか
わけを話せ
そして鬱々として進捗のない
わが人生を生き延びる知恵を与えよ

そうするのが
動物は人類のために創られたと
創世記にも記されている
お前たちが人間に出来る
最後で最大の務めだ
青梅泥棒出て来い
出てきて釈明しろ
あんな物のどこがよかったのか
俺に教えてくれ
頼む





自由詩 川原の小石の上に Copyright オキ 2013-02-12 10:11:20
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