ただならぬ魚
オキ


日は疾うに沈んで
間もなく川面に
星が瞬きはじめるだろう
澱みには
ただならぬ魚が潜んでいる
姿は見えなくても
気配が匂う

どうしてそんな思いを
抱いてしまったのか
目には見えなくても
信じることはできるかのようだ
そのしるしとして
終電車の時間なのに
彼は駄々っ子のように
動けないでいる

静かに水を湛える澱み
その奥に潜む魚を釣り上げ
P子への積年の思いを
遂げようというのか
それとも
諦めようというのか
釣り糸を垂れたまま
釣り人は一本の古木のように
堅く動かない




自由詩 ただならぬ魚 Copyright オキ 2013-02-11 12:54:15
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