異星の客
天野茂典

  


  モウレツな猿が異星人のように
  人間社会にもぐりこんでいる
  そうしてわれわれの情報を盗み取っている
  もう体毛は退化しほとんど人間と変わりない
  モウレツな猿は早起きだ
  モウレツな猿は身支度が早い
  モウレツな猿は速読だ
  モウレツな猿はテレビをみない
  モウレツな猿は新聞を読む 見出しだけ読む
  モウレツな猿は口喧嘩をしない
  モウレツな猿の目的は宇宙への脱出だ
  モウレツな猿は二足歩行をはじめた人類の異種だ
  モウレツな猿は長い間森の中に取り残されてきた
  モウレツな猿はその突然変異だ(駄洒落は面白い)
  モウレツな猿は高度な知能を持っている
  モウレツな猿はユーモアが大好きだ いつも冗句を言っている
  モウレツな猿は天文台と宇宙開発に積極的に関与している
  モウレツな猿はあなただ この詩を読んでいるあなた自身だ
  どこか思い当たるところはないか 自分が異星の客であることに
  あなたは巨大な組織の中の孤児なのだ
  たった一つの遺伝子なのだ その尊さにおそらく気づいているだろう
  ふつうの人間社会は滅びつつある
  ふつうの人間社会はせめて月に足跡を残しただけだ
  ふつうの人間社会にはユーモアが少ない
  ふつうの人間社会はピュアな恋愛感覚を失っている
  ふつうの人間社会は戦争や紛争がたえない
  ふつうの人間社会のアート全般が行き詰まっている
  ふつうの人間社会は他民族がひとつの輪をつくれない
  ふつうの人間社会は契れたハンカチのようにやわらかくない
  ふつうの人間社会はマスメディアにコントロールされ同一志向だ
  ふつうの人間社会は麻薬・犯罪・銃器・殺人が絶えない
  ふつうの人間社会は酸性雨が降り 砂漠化が進み オゾン層が破壊され 
  温暖化が進んでいる
  モーレツな猿は地球の浄化装置を知っている
  モーレツな猿はトランプのエースだ
  隠しだまをたくさんもって生まれてきた
  世代は変わる
  フレキシブルなセンスで一挙に社会を変えるのだ
  感覚革命
  みどりの意識で
  ダイナミックに火星移住を実行するのだ
  いまかれらは巨大ドームで環境リサイクルを試験中だ
  3001年第一陣がスペースシャトルで出発する予定だ
  われわれはその祖先ということになる
  モーレツな猿 その時もうだれもそんな風にいうものはいない
  地球は浄化され 人間は平和をとりもどし
  人々の暮らしも楽になり 笑いに満ちたたのしい国になっているのだから
  かれらは初めから異星人だったのかもしれない
  モウレツな猿よ




                  2004・11・17
  


自由詩 異星の客 Copyright 天野茂典 2004-11-17 18:04:21
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