星条旗に包まれて
天野茂典

 




  一時間のアンコール
  鳴り止まない拍手の中で
  彼女はうやうやしく頭をさげた
  麻薬と酒とたばこに溺れ
  おもいブルーズ 黒人のように歌った
  しいたげられ ストレンジャー・フルーツとなった彼ら
  自由を奪われ 労働のみを課せられた
  黒人奴隷の苦しみと 音楽を
  肌で身につけた ジャニス ジャニス・ジョプリン
  ぼくがはじめて聞いたのが 渋谷駅近くのバーだった
  ぼくの尊敬してやまない ミユージシャンのひとりが
  このジャニス・ジョプリン もう一人はウッドストックで
  アメリカ国歌を見事なインプロゼーションで
  演出してくれたジミ・ヘンドリックスだった
  アメリカ国歌が燃えるようにグルーブしたのだった
  ちぎれ たかなり 悶え 引きつり 壊されそうで
  最後までエレキ・ギターと才能との格闘に醍醐味を
  味あわせてくれたのだ
  ふたりとも太く短く27歳で他界した
  でも彼らの音楽は残る 人間共通のエモーションを
  もっているからだ 彼らは稲妻のように
  人生を走った それでじゅうぶんではないか
  天才でなければできない仕業だ
  一時間のアンコール
  それでも拍手は鳴り止まない



               2004・11・18


自由詩 星条旗に包まれて Copyright 天野茂典 2004-11-18 07:35:14
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