ゴースト(無月野青馬)

灰は「降り出す」と私を脅した
薄く淡くガーゼのように
「口を窒息させる」と私を脅した
溶け出せば
雪解け水のようになり
末端までも「窒息させる」と脅した
そんな
脅しも注意深く見れば
破綻だらけだったから
シナリオの予測は難なく出来る
私は安心していて
専門分野だけを調査・研究していた
変わって
雪はいつも刹那だけれど
雪はいつも世界を変えた
私は雪を愛し
雪の研究をしている
残り僅かな時間とは知らずに


弱い心の隙間に
入り込む灰は
見えない壁と偽りの漆で
視界を遮る
しんしんと降り積もる
あの白雪だけが
灰を覆い尽くせる
鬼を騙し仰せると
私は信じていた
かつて行程表を見た
マクシミリアンが来て居た
油断してはいけない
歴史上では油断した者が尽く横死していた
私は誘惑をのみ気を付けていた


雪はいつも刹那だけれど
雪はいつも世界を変えた
雪はいつも刹那だけれど
雪はいつも堕落を止めた
雪はいつも刹那だけれど
雪はいつも調べを変えて
人に変遷を与えていた
灰は
残り僅かな心に
死にそうな心に共感し
化粧をし
執拗に鬼を人間に似せた
化粧は
着実に施され
その予告、報告などは一切なされない
私は知らない
私には知らされない
私は知らされない者でしかない
結局、私は雪に飛び込む
うなだれて轢死する前に
雪崩を呼び出す
灰を追い払う
雪を食べてみる
試しに
空白に
スキンシップを取ってみる
−存在感の無さ−
イエティといつか手を取り合って、種の現存を誇りたい
研究をしていたい
灰を追い払っても
改訂され採用されていく駆逐のシナリオ
その完全なる破綻の為に
この稚拙な詩を使おう
破断の為に
雪には
永劫吹雪いていて貰おう
専門性を埋め尽くすのも良い
完全なる逆怨みの吸収材にする
その為に
詩を凍結しよう
雪にまぶしてしまおう
雪を食べてみよう
−存在価値の無さ−が舌の上で溶ける


灰は口を噤んだ
残り僅かな時間
私は灰を愛そうと努力する
雪を誇りながら
イエティに惨殺されたい
私はイエティに惨殺されたい
刹那的に
世界的に
マクシミリアンよ
見よ
この完全な計画を
完全なる雪化粧を
愛せ





自由詩Copyright ゴースト(無月野青馬) 2011-01-12 01:05:12
notebook Home 戻る  過去 未来